うつ病で住宅ローン返済が困難になったら?
うつ病が原因で働けなくなってしまった。
収入がなくなる、或いは減る事から住宅ローンの返済が困難になった。
何か解決策はないかを知りたい。
本記事では次の内容を解説します。
この記事を読むことで、うつ病になって働けなくなった場合でも住宅ローンを返済する事がある程度可能であることがわかります。
この記事を書いているのは民間の銀行で20年以上の経験を持つ元銀行員です。
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うつ病になっても労災保険か健康保険の傷病手当で何とかなります
健康保険の傷病手当金で給与の2/3は支給される
会社員、公務員、個人事業所に勤務している人でも全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している人であれば、病気や怪我で会社を休んでいる場合でも、健康保険の傷病手当金が支給される制度があります。(国民健康保険にはそのような制度はありません。)
病気や怪我、という中にはうつ病も含まれますので、うつ病で長期間会社を休む事になった場合でもある程度の収入は確保できます。
後述しますが、支給額はおよそ過去12カ月の給与支給額の2/3、支給期間はおよそ1年6ヵ月ですから、その間にしっかりと自宅や病院で療養し、復職を目指す事が肝要です。
元の職場に戻っても良いですし、嫌なら転職すれば良いだけの話です。
疾病手当金が支給されたなら、そこから住宅ローンの返済をする事も可能ですから何とかなります。
しかし給付期間は限定されていますのでそれまでに復帰を目指しましょうという事です。
疾病手当金を受ける為の条件
疾病手当金を受ける為には以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 業務外の病気やケガで療養中であること
- 療養のための労務不能であること
- 4日以上仕事を休んでいること
- 給与の支払いがないこと(一部支給があれば疾病手当金から給与支給分を控除した金額が支給される)
1の条件で、何故業務外かというと、業務上で起こった事であれば、労災の範疇になるからです。但し、業務上の怪我であれば労災認定となる事は明らかですが、うつ病など精神的な病気の場合は労災認定となるかどうか判断が難しくなると思います。
4の条件の補足ですが、傷病手当金は病気、怪我によって会社を休む場合に、健康保険の被保険者やその家族の生活を保護する為の制度であって、会社から生活に十分な給与をもらえない時に支給されます。
従って、会社から給与支払いがない事が条件であり、一部給与が支給されていれば、疾病手当金から給与支給分を差し引きされた額が支給される仕組みとなっています。
疾病手当金はいくら支給される?
支給開始日前の以前12ヵ月分の標準報酬月額の平均を30日で割って算出した金額の2/3です。
標準報酬とは https://jinjibu.jp/keyword/detl/750/
報酬には基本給の他、役付手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当なども含みますし、賞与も含みます。
疾病手当金の支給される期間
疾病手当給付金が支給開始となるのは、病気や怪我で休んだ期間の内、最初の3日目(待期)を除いて4日目からです。
待期は連続3日である事が必要で、支給期間は待期のあった次の日から1年6カ月間です。
その間に出勤し、給与が発生して疾病手当金給付が止まった事があった場合でも、待期のあった次の日から1年6カ月間という期日は変わりません。
参考:健康保険 仕組み図
労災保険で給与の80%は支給される
労災保険に加入している事業所にお勤めの人なら、病気や怪我で会社を休んでいる場合でも労災の休業(補償)給付を受けられる制度があります。
個人事業主の場合は労働者ではない為、労災保険の対象ではありませんが、特別加入団体を通じてなら労災保険に加入する事が可能です。労災に加入していれば休業補償も受けられます。(但し、建設業者、個人タクシー業者等、加入できる業種には限りがあります。)
健康保険の傷病手当金は、業務外の病気や怪我が原因である事が条件ですが、
労災保険は業務上の病気や怪我が原因である事が条件となります。
仕事でセクハラやパワハラを受けた事が原因で精神障害を起こし、長期休業を余儀なくされる場合は労災保険の対象になります。
参考:厚生労働省のホームページ 精神障害の労災補償について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken04/090316.html
精神障害の労災認定要件は以下の通りです。
- 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
- 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
- 業務以外の心理的負荷や固体側要因に発病したとは認められないこと
うつ病は気分(感情)障害で、1の条件に含まれます。
2の条件の業務による強い心理的負荷にはいじめやセクハラ、パワハラを受けたり、過度な時間外労働を強いられたリするなどの特別な出来事がある場合だけでなく、
特別な出来事がない場合でも、例えば達成困難なノルマを課せられたリ、業務に関し違法行為を強要されたりといった場合でも心理的負荷表に基づいて評価されます。
3の条件の業務以外の心理的負荷とは、プライベートに起こった出来事、例えば自分が離婚したり、借金をしたり、身内が死亡したり、ご近所とトラブルがあったりする事です。
個体側面要因とはアルコール依存症や精神障害の疾病履歴等の事です。
精神障害になったのは仕事が原因なのか?それとも仕事じゃないのかについて慎重に判断されますので、うつ病などの精神障害が労災認定されるのはハードルが高いと言えます。
休業(補償)給付を受ける為の条件
- 業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養であること
- 労働することができないこと
- 賃金を受けていないこと
以上の要件を満たし、その第4日目から支給されます。休業の初日から第3日目までを待期期間と言い、その間については事業主が1日につき平均賃金の60%を補償します。
3日の待期期間があるのは健康保険の疾病手当金給付でも同じですが、待期期間中にも補償がある点で疾病給付金とは異なります。
休業(補償)給付金はいくら支給される?
休業1日につき給付基礎日額の80%(保険給付60%+特別支給金20%)が支給されます。
参考:厚生労働省のホームページ 休業補償の計算方法
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei34.html
給付基礎日額とは簡単に言うと、事故が発生した日の直前3カ月間の報酬の総額をその期間の日にちで割った一日当たりの賃金の事です。賞与や臨時にもらった賃金については計算に入れる事はできません。
休業(補償)給付金の支給される期間
上記の3要件、業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため、労働することができないため、賃金を受けていないため、を満たす限り、休業4日目からその期間中は支給されます。
療養開始後1年6ヵ月が経過し、その怪我や病気が治っておらず、疾病等級表の疾病に該当する障害がある場合は、疾病(補償)年金に切り替わります。
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疾病給付金、休業給付金が出ても返済が苦しい場合は
銀行にも支援を求める
疾病給付金、休業給付金が出ても返済が苦しい場合は、銀行に条件変更をお願いしてみましょう。
条件変更手続きとは、現在の借入条件である、毎月の元利均等返済額、ボーナス返済額、返済期限などを変更する手続きの事です。
条件変更にも審査があり、認められれば金銭消費貸借契約変更契約証書という契約書を取り交わして行われます。
これにより一定期間の返済金額を減らす事ができます。
と言っても借金が棒引きされるわけではなく、あくまでも一時的な措置として、一定期間返済額を少なくするという対応がされます。
例えば1年間は返済を猶予し、毎月利息だけ支払う。1年後から再度分割返済というパターンもあるでしょうし、
当初の1年間は返済金額を少なくし、その後その時の残高と残り期間に応じた元利均等返済額で分割返済するというパターンもあるでしょう。
うつ病になっても治療して復職できる可能性は十分ありますので、イメージとしては一定期間だけ返済額を軽減してもらう、1年後を目途に、正常返済に戻す、というやり方です。
場合によっては借入期間の延長に応じてくれる銀行もあると思います。
条件変更手続きには事務手数料、延長保証料等が必要になります。
また、条件変更は銀行にとってみれば、後ろ向きな案件ですし、貸したお金がちゃんと返してもらえるかどうかに黄信号が灯っているような状態ですので、条件変更中は例えば車が欲しいと言って新たにローンを組むことは難しいと考えてください。
返済が無理な事から住宅ローンを延滞させることは得策ではありません。
延滞させるよりも条件変更をすべきです。
それでも返済が困難な時にはこちらをご覧ください。
銀行で入った団信、債務返済支援保険について
銀行で住宅ローンを借りた際に、団信や、債務返済支援保険に加入している場合が多いと思います。
団信は被保険者(住宅ローンの債務者)が亡くなったり高度障害状態になった場合じゃないと保険金は下りませんのでうつ病には適用されません。
債務返済支援保険は、30日を超えて、被保険者が病気や怪我で入院した場合、最長25ヵ月にわたってローン返済額相当の金額が保障されるというものですが、うつ病は適用されません。
まとめ
うつ病になって、仕事ができない状況に陥っても、
会社員、公務員などであれば健康保険の疾病手当金により、労災の認定を受ければ労災保険によりある程度の収入は補償されます。
給付がされている内にしっかり療養して復職を目指しましょう。
住宅ローンの返済がある場合、これらの給付により住宅ローンの返済は、ある程度は可能でしょう。
それでも返済が困難な場合は銀行で条件変更をお願いしましょう。